税務調査の対策

 税務調査を納得できる結果で終わらせるためには、事前の準備や当日の調査官のとのやりとりが非常に重要になります。
そこでこんな時はどうすべきかというポイントを中心に、税務調査対策についてまとめました。

不用意な対応では大損する?

 税務調査の対応でやってはいけないことはその場しのぎの曖昧な回答です。不自然な態度は不正を疑われて調査が長引くばかりです。
またグレーゾーンの処理を正当なものであると証明できるかどうかが調査結果を左右します。

税務調査対応でやってはいけないこと

税務調査は申告内容が事実に基いてきちんと経理処理されているか、税務の基本から外れていないかを明らかにするために行われます。
したがって経理処理が正当なものであることを証明する請求書や契約書などの資料を用意して、質問に対して説明できれば何の問題もありません。

税務調査対応の基本は余計なことは話さないことです。

質問されたことに対して素直に答えるだけでよいのですが、自信がなかったり何かを誤魔化そうとすると人はつい喋りすぎてしまいます。

相手は税務調査のプロですからそのような態度を見逃しません。不正をしていなくても、不正を疑われて調査が長引くことになりますので注意が必要です。

その場を取り繕って曖昧な回答するのは絶対にやってはいけません。わからない点は正直にわからないと認め、事実関係を調べてから後で答える旨を伝えることです。

 

グレーゾーンへの対応が税務調査の結果を左右する

税務調査では明らかに誤っているもの(クロ)と明らかに正しいもの(シロ)の他に、どちらの可能性も考えられるグレーゾーンというものが存在します。

調査官は税金を徴収する側ですのでグレーゾーンに関しては申告漏れやミスがあるのではないかと疑います。
例えば役員報酬や退職金が多すぎるのではないか、出張旅費や慶弔費などが高すぎないかといった具合です。

こうしたグレーゾーンを事実に照らし合わせて、正当なものと証明できるか否かが税務調査の結果を左右すると考えてもよいでしょう。

申告ミスと判断されれば、最大14.6%の延滞税や場合によっては最大40%の重加算税が課せられますので、結果次第で数百万から数千万という単位の納税額の差が出てきます。

グレーゾーンの折衝は、余程の税務の知識と交渉力が無いと勝ち目はありません。

できれば税務調査対応の実績が豊富な税理士に立ち会いをお願いすることをおすすめします。
納税者の代理人として税務関連の主張ができるのは税理士のみですし、不用意な回答を避けるためにも有効だからです。

 

 

交渉で金額は変わるのか?

 税務調査で交渉を全くしないで指摘をすべて受け入れてしまうと、本来納めなくてもよい税金も納めることになります。
明らかなミスは別として、根拠があまり明確でない指摘に対しては交渉することで納税額はかなり変わってきます。

税務調査で交渉をしないとどうなるのか

税務調査では様々な経理処理上の問題点が指摘されます。

しかし指摘された事項についてすべて受け入れて修正申告をする必要はありません。
なぜならその中には経費を二重に計上していたというような明らかなミスの他に、根拠があまり明確ではない指摘も含まれているからです。

例えば社用車が高級外車で個人的趣味が入っているため会社の資産計上は認められないであるとか、接待交際費が高すぎるのではないかといった指摘です。

高級外車であっても、業務以外に使用していないという証拠を揃えれば認められますし、接待交際費に関しては設定されている上限額を超えず、事業を進める上で必要だったと証明できれば否認されることはありません。

調査官側としては、納得して修正申告してもらえるに越したことはないという考え方ですので、納得が行かない場合は交渉の余地があるということです。

国税庁の資料によれば平成26事務年度の追徴課税額は670億円、1件あたりに換算すると540万円になります。
この中には交渉を全くせずにそのまま修正申告をして、本来納めなくてもよいものも含まれているのです。



税務調査の交渉は税理士に任せるのが得策

税務調査での交渉の必要性が理解できたとしても、税務や法律知識が全くない状態で行うことは極めて難しいと言えるでしょう。

高級外車を業務用と認めてもらうためには運行記録や使用者名簿の有無が重要になりますし、以前は大企業で一切経費として認められていなかった接待交際費は、平成26年4月以降について飲食費の50%を計上できるようになりました。

こうした専門的知識を持って税務調査官に対応するためには、やはり税理士の力が必要になります。
各種の税法に精通した税理士であれば判例を用いて交渉したり、必要経費であることを証明するために何が必要であるかアドバイスできるからです。

専門家と同席することで調査官の指摘に対してスピーディに対応できますし、事前準備やシミュレーションを行うことで心理的負担が軽減し、不当な追徴課税を回避することができます。
交渉により百万単位以上の納税額の差が出るのであれば、税務調査サポート費用がかかっても税理士に依頼する方が得策と言えるでしょう。





指摘に納得できない時は?

税務調査で指摘に納得できない場合は、修正申告をしないで更正処分通知を待ちます。
更正処分にも納得できない場合は異議申立てをして、棄却や取り消された場合は審査請求をします。
最終的には税務訴訟に持ち込むことも可能です。

納得がいかない場合の手続きの流れ

税務調査での指摘に納得した場合は、修正申告をして追加納税をします。
修正申告をすることは間違いを認めたということになりますので、提出後は税務署に対し異議申立てはできません。

したがって指摘にどうしても納得できない場合は、修正申告をしないことです。
修正申告を拒否すると税務署は追加納税額の更正処分通知を送付してきます。
さらに更正処分の内容に納得しない場合は、租税訴訟手続に入ります。租税訴訟手続とは異議申立て、審査請求、税務訴訟のことで、この順序で進めていくことになります。

異議申立てと審査請求は行政手続で、2つを合わせて不服申立て手続きと言います。税務訴訟は司法手続で裁判所で審理されることになります。





税務調査で最も怖い?重加算税の説明と対策

重加算税は脱税の疑いがある場合に課せられることになる最も重いペナルティです。申告漏れや経理の入力ミスによって脱税が疑われる場合も。脱税と無縁と思っていても誰でも引き起こす可能性があります。

そもそも重加算税とは?

加算税の中で最も重いペナルティが重加算税です。
加算される税率は35~50%で計算され、高い税率で脱税に対する制裁処置とされています。
ほかにも今後の事業に影響が出るペナルティを受けることになるため、絶対に避けなければならない加算税です。

重加算税の対象として疑われた場合、まず税務調査が入ることになります。
調査では売上について徹底的に調べられ、ミスがあればまず間違いなく発見されると言っていいでしょう。
在庫金額や領収書も1つひとつチェックされます。脱税をしていた場合、重加算税からは逃れられません。



課税されるケースは?

国税庁が公表しているデータによると、法人に対して行われた税務調査では約2割の企業が重加算税を課せられています。

重加算税の対象条件は所得や消費税などに「仮装」「隠ぺい」が確認された場合です。
「隠ぺい」とは本来計上しなければならないものを隠すこと。
「仮装」とは計上する請求書の数字を書き換えたりねつ造したりすることです。

経理による予期せぬミスで「仮装」や「隠ぺい」を疑われてしまうケースもあります。
経理での入力ミスや申告忘れが故意ではない場合、税務調査でそれを証明できなければ脱税とみなされてしまうことがあるのです。

行き過ぎた節税も加算税の対象となる可能性があります。税務調査が入ると脱税について徹底的に調査されることになります。



重加算税への注意点と例外

税務調査は通常、過去3年分の調査を行ないます。
まず3年分調査して大きな間違いがあった場合、過去5年の調査へ。
さらに脱税の疑いがあった場合には、過去7年までさかのぼって調査されることになります。
7年間の税金に重加算税と延滞税が加えられることで膨大な金額となるでしょう。何百万~何千万の支払いが要求されることがあります。

重加算税の対象としてマークされると税務調査も徹底的に行われます。
一度重加算税を課せられてしまうと税務署からの信用もなくなり、その後も税務調査の対象となりやすくなるでしょう。

重加算税の対象とならない計上ミスもあります。
売上金や経費の計上を実際と異なる日付で入力した場合や、経費にならない費用を計上してしまっただけでは脱税にはなりません。
修正申告が必要になりますが売上を「隠ぺい」したり、経費を「仮装」したりしたわけではないからです。



ネット収入専門の税務調査官もいます!

これまで税務署はIT関連に疎いといわれていました。

しかし最近では「情報技術専門官」という専門家が税務署に配属されたので、ネット事業についても税務調査が入ることは多いにありえます。

こちらでは、情報技術専門官の特徴や、事業に対して情報技術専門官が注意しているポイントについてまとめています。

個人でネットビジネスをしている人なども対象となりえますので、ぜひ参考にしてください。